採用動画の制作費に
助成金・補助金は使えるのか
採用動画の稟議で「補助金は使えないのか」と聞かれる場面は多いはずです。
この記事では、公募要領やパンフレットなどの一次情報を実際に開いて確認した結果だけを書きます。制作会社のサイトに書かれている内容と食い違う部分があるので、そこもそのまま載せます。
結論:そのまま使える国の制度はありません
先に3行で書きます。
- 採用動画の制作費に直接使える、全国共通の補助金・助成金はありません。
- 理由は単純で、主要な補助金の目的が「販路開拓」だからです。採用は販路開拓にあたりません。
- 残る道は2つだけ。①内製化を「研修」として設計するか、②自治体の採用PR補助金を使うかです。
「採用動画 補助金」で検索すると、使えると書いてある記事がたくさん出てきます。ただ、一次情報を開くと書いてあることが違います。順に見ていきます。
よく名前が挙がる3つと、対象外の理由
| 制度 | 本来の対象 | 採用動画は | 一次情報での記載 |
|---|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓等の取組(補助率2/3) | 対象外 | 公募要領の広報費「対象とならない経費例」に求人広告・会社案内パンフレット作成が明記。ウェブサイト関連費も「販路開拓等を行うためのウェブサイト」に限定 |
| IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金) | ITツール・ソフトウェアの導入 | 対象外 | 導入するのはソフトウェアであり、動画という制作物は対象にならない |
| 人材開発支援助成金 「新規採用助成」 | 教育訓練休暇を取る社員の代替要員の採用(27万〜67.5万円) | 無関係 | 令和8年4月8日に追加。名称に「採用」が入るため誤解されやすいが、採用広報とは関係がない |
持続化補助金は、公募要領に名指しで書いてあります
いちばん多く名前が挙がるのが小規模事業者持続化補助金です。ただ、第20回の公募要領(2026年5月27日公開)の「②広報費」の項には、対象とならない経費例としてこう書かれています。
公募要領より
商品・サービスの宣伝広告を目的としない広告・看板・会社案内パンフレット作成・求人広告(単なる会社の営業活動に活用されるものとして対象外)
「採用サイトに載せる動画ならウェブサイト関連費では」という質問もよく受けますが、こちらも定義が「販路開拓等を行うためのウェブサイトやECサイト、システム等」に限定されています。採用サイトは販路開拓のサイトではないので、当てはまりません。
なお広報費・ウェブサイト関連費はどちらも補助金交付申請額の上限が30万円(税込)で、その費目だけでの申請もできません。仮に対象だったとしても、採用動画の制作費をまかなえる規模ではありません。
それでも残る2つの道
① 内製化を「研修」として設計する
動画そのものは対象外でも、動画を作れる人材を育てる訓練は対象になり得ます。使うのは人材開発支援助成金の人材育成支援コース(人材育成訓練)です。2026年8月時点の要件は次のとおりです。
- 職務に関連した知識・技能を習得させる10時間以上のOFF-JTであること
- 自社以外の事業主が主催する訓練でも構いません(外部の制作会社による指導も含まれ得ます)
- 中小企業の経費助成率は45%(賃金要件・資格等手当要件を満たす場合は60%)
- 賃金助成は1人1時間あたり800円(同要件を満たす場合1,000円)
- 計画届を、訓練開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ提出すること
- 訓練経費は、支給申請日までに事業主が全額負担していること
- 1労働者1訓練あたりの経費助成限度額は15万円(訓練時間が10時間以上100時間未満の場合・中小企業)
最後の限度額が実務上は効きます。たとえば訓練費が60万円でも、受講者が1名なら助成は15万円で頭打ちです。受講者を2名以上にすると45%分がそのまま通るため、誰に受けさせるかを先に決めておく必要があります。
ここで大事なのは、対象になるかを判断するのは管轄の労働局だということです。制作会社が「使えます」と言える立場にはありません。計画届を出す前に、必ず労働局か顧問の社労士に確認してください。
当社の内製化支援は、初月に戦略策定と企画・撮影・編集の技術指導、2ヶ月目以降はサポート90分×2回/月という構成です。この助成金に申請できる形式(受講案内・カリキュラム・時間数・実施記録・修了報告)で書類をお出しします。ただし申請の代行はしません。
② 自治体の採用PR補助金を使う
国の制度にはありませんが、市区町村単位では採用コンテンツそのものを対象にした補助金が実在します。石川県能美市の「市内事業者採用PRコンテンツ制作補助金」がその例です。
- 対象は採用ページ・採用動画・採用パンフレットの外注費(取材・撮影・シナリオライター費を含む)
- 補助率は対象経費(税抜)の2分の1、年間の上限は15万円
- 制作に着手する前の申請が必要。申請できるのは隔年
金額としては大きくありませんが、「採用動画そのもの」を名指しで対象にしている点が国の制度と決定的に違います。この種の制度は年度ごとに現れたり消えたりするので、自社の市区町村名と「採用 補助金」で検索して、産業振興課・商工課のページを直接確認するのが確実です。
申請で引っかかる4つの落とし穴
1. 着手前の申請が原則です
契約・発注を済ませたあとの経費は、ほぼ例外なく対象外になります。見積もりを取ってから補助金を探し始めると間に合いません。制度を使う前提なら、見積もりより先に申請の段取りを決めてください。
2. 後払いです
補助率2分の1でも45%でも、一度は全額を自社で支払います。入金は事業終了後の実績報告を経てからです。資金繰りの話として稟議に書く必要があります。
3. 「採用」と書くと落ちる制度があります
持続化補助金のように目的が販路開拓の制度では、申請書に採用目的と書いた時点で対象外です。逆に、目的を偽って通そうとすれば不正受給になります。制度の目的と実際の目的が一致していないなら、その制度は使わないのが正解です。
4.「助成金で実質無料になります」と言う業者には近づかない
厚生労働省のパンフレットには、「助成金を活用して従業員に訓練を実質無料で受けさせることができるなどと謳い、本来受けることができない助成金・訓練の提案・勧誘を行う訓練機関やコンサルティング会社などが存在している」という注意喚起が明記されています。この助成金は事業主が訓練経費を全額負担していることが支給要件なので、値引きや返金があると要件を外れます。また、助成金を申請する場合だけ受講料を高く設定している場合、その差額は算定経費から外されます。
助成金を待つより、金額を下げるほうが早い
ここまで調べたうえで正直に書きます。採用動画のために助成金を探す時間は、多くの場合わりに合いません。
国の制度は対象外、自治体の制度は上限15万円前後で年度限り、内製化研修の枠は計画届が1か月前まで。この3つを追いかけるより、金額を社内決裁で通る水準まで下げて、先に1本作ってしまうほうが速いことが多いというのが実感です。
当社の場合、社員インタビューはお一人10万円(撮影日1日につき最大5名まで)です。50万円は稟議が要るが、10万円なら現場判断で通るという会社は少なくありません。まず1名で試して社内の反応を見てから人数を増やす、という進め方ができます。既にある写真と原稿だけで1本作る形なら、撮影がないため費用はかかりません。
それでも制度を使いたい場合、いちばん現実的なのは①の内製化研修です。訓練として設計できる分、金額の規模も採用動画1本より大きく取れます。
よくある質問
Q. 採用動画の制作費に、小規模事業者持続化補助金は使えますか?
A. 使えません。第20回の公募要領では、広報費の「対象とならない経費例」に「商品・サービスの宣伝広告を目的としない広告・看板・会社案内パンフレット作成・求人広告(単なる会社の営業活動に活用されるものとして対象外)」と明記されています。この補助金の目的は販路開拓であり、採用は販路開拓にあたらないためです。制作会社のサイトで「採用動画にも使えます」と書かれていることがありますが、公募要領の記載とは食い違っています。
Q. 採用サイトに載せる動画なら「ウェブサイト関連費」で申請できますか?
A. できません。ウェブサイト関連費の定義は「販路開拓等を行うためのウェブサイトやECサイト、システム等の開発、構築、更新、改修、運用をするために要する経費」です。採用サイトは販路開拓のためのサイトではないため、この費目にも当てはまりません。なお同費目の補助金交付申請額の上限は30万円(税込)で、この費目だけでの申請もできません。
Q. 動画制作を社内でできるようにする研修なら、助成金は使えますか?
A. 要件を満たせば対象になり得ます。人材開発支援助成金の人材育成支援コース(人材育成訓練)は、職務に関連した知識・技能を習得させる10時間以上のOFF-JTが対象で、外部の事業主が主催する訓練でも構いません。中小企業の経費助成率は45%(賃金要件等を満たす場合60%)、賃金助成は1人1時間あたり800円です。ただし1労働者1訓練あたりの経費助成限度額が15万円あるため、受講者が1名だけだと頭打ちになります。なお対象になるかどうかを判断するのは管轄の労働局です。必ず計画届を出す前に相談してください。
Q. 助成金の申請は、制作会社が代行してくれますか?
A. 当社は代行しません。雇用関係助成金の申請代行は社会保険労務士の業務であり、映像制作会社が請け負える領域ではないためです。当社がお手伝いできるのは、訓練の中身(カリキュラム・時間数・実施記録)を助成金の様式に書ける形で設計し、見積書と実施報告書を出すところまでです。申請そのものは、顧問の社労士か管轄の労働局にご相談ください。
Q. 見積もりを取ってから補助金を探しても間に合いますか?
A. ほとんどの場合、間に合いません。補助金・助成金は着手前の申請が原則で、契約や発注を済ませたあとの経費は対象外になります。人材開発支援助成金の計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ提出する必要がありますし、自治体の採用PR系補助金も制作着手前の申請を条件にしていることがほとんどです。制度を使う前提なら、見積もりより先に申請の段取りを決めてください。
Q. 助成金が使えないなら、採用動画はいくらから始められますか?
A. 当社では社員インタビューをお一人10万円で承っており、撮影日1日につき最大5名まで撮影できます。50万円は稟議が要るが10万円なら現場判断で通る、という会社は少なくありません。また、既にある写真と原稿だけで1本お作りする形であれば、撮影がないため費用はかかりません。助成金を待つより、金額を下げて社内で通すほうが早いことが多いです。
この記事で確認した一次情報
・中小企業庁「小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>(第20回)」公募要領(2026年5月27日公開)
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260527002.html
・厚生労働省「人材開発支援助成金」令和8年度版 人材育成支援コースのご案内(令和8年8月3日版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
・石川県能美市「市内事業者採用PRコンテンツ制作補助金」
https://www.city.nomi.ishikawa.jp/www/contents/1651483861181/index.html
本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづく整理です。制度の内容・要件・受付期間は変更されます。実際の可否を判断するのは各補助金事務局および管轄の労働局です。申請前に必ず最新の公募要領と、顧問の社会保険労務士または管轄の労働局にご確認ください。
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