「うちの業界で採用動画を作っても、どうせ誰も見ない」。ビルメンテナンスや設備管理の会社で採用の話をすると、かなりの確率でこの言葉が出ます。
では実際のところ、何回見られているのか。誰も数字を出していないので、自分で317本数えました。結論から言うと、この言葉は半分正しくて、半分間違っています。
結論|3行
- 現場職の採用動画は、ほとんど見られていません。317本の中央値は537回。64%が1,000回未満です。
- ただし「業界だから見られない」のではありません。密着形式は他の5.7倍、10分超は1分以内より上、役割でくくったタイトルは個人名入りより上でした。差がついているのは業界ではなく、作り方です。
- そして再生数は、採用の成果ではありません。この記事の数字から応募数は一切分かりません。ここを混ぜると判断を誤ります。
調べ方と対象
2026年9月1日に、YouTubeで一般公開されている採用動画を1本ずつ開いて記録しました。対象は次のとおりです。
| 対象 | 現場職11業種・47社・317本 |
|---|---|
| 取得日 | 2026年9月1日 |
| 公開日の範囲 | 2016年7月18日 〜 2026年8月29日 |
| 記録した項目 | 再生数/尺/公開日/密着形式かどうか/タイトルの付け方/URL |
| 含まないもの | 自社サイトへの埋め込み再生、Instagram・TikTok、限定公開、社内上映、非公開の分析データ |
| 取り方の制約 | 各社のチャンネル一覧から取得できる範囲(最新30本程度)まで |
※ 業種の分類は当社が実査上つけたものです。事業が複数にまたがる会社は、採用動画で主に打ち出している職種側に寄せています。
※ 中央値は、対象が偶数本で0.5になる場合は四捨五入しています。尺の区切りは境界の値を下の帯に含めます(60秒ちょうどは「〜1分」、180秒ちょうどは「1〜3分」)。
業種別の再生数
まず全体像です。中央値の高い順に並べています。
| 業種 | 社数 | 本数 | 再生数の中央値 | 最大 | 1万回超 |
|---|---|---|---|---|---|
| 介護 | 3 | 25 | 2,836 | 502,858 | 7本 |
| 清掃 | 5 | 30 | 1,079 | 554,267 | 3本 |
| 警備 | 5 | 34 | 1,000 | 1,491,505 | 6本 |
| 製造 | 3 | 17 | 929 | 709,801 | 5本 |
| 空調衛生 | 4 | 25 | 722 | 7,249 | 0本 |
| 運送 | 5 | 30 | 647 | 492,492 | 7本 |
| 建設 | 5 | 39 | 366 | 17,891 | 2本 |
| ビルメンテナンス | 4 | 21 | 304 | 3,290 | 0本 |
| 電気工事 | 5 | 31 | 282 | 42,881 | 1本 |
| 造園土木 | 4 | 29 | 262 | 1,774 | 0本 |
| 保育 | 4 | 36 | 132 | 845 | 0本 |
1万回を超えた動画が1本もない業種が4つあります。空調衛生・ビルメンテナンス・造園土木・保育です。この4業種では、誰もまだ「見られている採用動画」を持っていません。
裏を返すと、先に1本置けば、その業界で最初の1本になります。介護や警備のように上位が数十万回まで伸びている業種では、いま参入しても埋もれます。数字が低い業種のほうが、実は入りやすい状態にあります。
中央値537回という現実
317本全体では、中央値537回、平均23,446回でした。平均が中央値の44倍あります。ごく一部が全体を持っていっているということです。
| 1,000回未満 | 203本(64.0%) |
|---|---|
| 1万回未満 | 286本(90.2%) |
| 10万回超 | 11本(3.5%)。この11本だけで総再生数の87.6% |
| 47社のうち | 34社は最大でも1万回に届かない。14社は最大でも1,000回に届かない |
採用動画の相談を受けるとき、「何回くらい再生されますか」と聞かれます。正直に答えると、数百回です。数万回を前提にした企画は、まず外れます。
これは悪い知らせに見えますが、判断の土台としては良い知らせです。競合他社の採用動画も、同じように見られていません。数百回の世界で戦っているなら、必要なのはバズではなく、応募を検討している数十人にきちんと届くことです。
密着系と、それ以外の5.7倍差
317本を「密着形式(1日の流れや現場に同行して撮ったもの)」と「それ以外(会社紹介、座ってのインタビュー、募集告知など)」に分けると、はっきり差が出ました。
| 形式 | 本数 | 再生数の中央値 |
|---|---|---|
| 密着系 | 74本 | 2,306回 |
| それ以外 | 243本 | 403回 |
5.7倍です。1万回を超えた31本のうち20本が密着形式でした。本数では全体の23%しかない形式が、上位の3分の2を占めています。
理由は単純だと考えています。求職者が知りたいのは、その会社の理念ではなく「入社したら自分は何をして一日を終えるのか」だからです。座って理念を語る映像は、それに答えていません。
尺との、U字の関係
「採用動画は短いほうがいい」とよく言われます。実測はU字でした。
| 尺 | 本数 | 再生数の中央値 |
|---|---|---|
| 〜1分 | 31本 | 635回 |
| 1〜3分 | 87本 | 313回 |
| 3〜6分 | 88本 | 549回 |
| 6〜10分 | 49本 | 774回 |
| 10分〜 | 62本 | 1,529回 |
いちばん多く作られている1〜3分が、いちばん低いという結果になりました。「3分くらいにまとめましょう」は、作り手にとって無難なだけで、数字の裏づけがありません。
本数の多さと再生数の無関係
47社について「公開本数」と「その会社の動画の再生数の中央値」の相関を取ると、r = −0.211。ほぼ無関係か、むしろ弱い負の相関でした。
8本以上公開している19社に絞ると、中央値は431回で、全体の中央値537回を下回ります。たくさん作ることと、見られるものを作ることは、別の話です。
制作会社を選ぶときも同じだと考えています。「制作実績◯,◯◯◯本」は、その会社が回している案件の量を示す数字であって、成果を示す数字ではありません。
タイトルの付け方で開く差
ここが今回いちばん差が大きかった項目です。社員インタビューのタイトルを「個人名を出したもの(〇〇さんインタビュー)」と「役割でくくったもの(設備管理/施工管理/営業)」に分けました。
| タイトル | 本数 | 中央値 | 1,000回超 | 1万回超 |
|---|---|---|---|---|
| 役割でくくった | 76本 | 759回 | 35本 | 12本 |
| 個人名を入れた | 39本 | 286回 | 0本 | 0本 |
個人名を入れた39本は、1本も1,000回に届いていませんでした。最大でも957回です。さらに、よく見られている密着形式74本のうち、タイトルに個人名が入っているものは0本でした。
採用動画の相談でよく出るのが「撮った社員が辞めたら使えなくなる」という懸念です。役割でくくれば差し替えが効く、という運用上の答えはこれまでもありました。今回の実測はその一歩先を示しています。役割で撮ったほうが、そもそも見られています。
求職者は「〇〇さん」を知りません。知りたいのは「設備管理の人が、どんな一日を過ごすのか」です。タイトルはその問いに答える言葉にしてください。
公開からの経過年数
採用動画は、公開直後に跳ねるものではありませんでした。
| 公開からの経過 | 本数 | 再生数の中央値 |
|---|---|---|
| 1年未満 | 87本 | 242回 |
| 1〜3年 | 124本 | 518回 |
| 3〜5年 | 63本 | 619回 |
| 5年以上 | 43本 | 892回 |
1年未満と5年以上で3.7倍。1万回を超えた31本の経過年数の中央値も2.0年でした。3か月で判断すると、ほぼ全部が失敗に見えます。
この数字で言えないこと
再生数は、採用の成果ではありません
このデータから分かるのは再生数だけです。応募が何件増えたか、採用が決まったか、定着したかは一切分かりません。再生数の多い動画が採用に効いた証拠にはならないし、少ない動画が失敗だった証拠にもなりません。ここを混ぜて「再生数が伸びたので成功です」と報告する会社があれば、疑ってください。当社も言いません。
短尺の高再生は、広告配信の可能性が高いと見ています
1分以内で1万回を超えた6本は、3社に集中していました。自然に見られたというより、広告として配信された結果と考えるのが自然です。「短く作れば伸びる」とは読まないでください。広告費をかけずに上位に入っているのは、10分を超える密着形式のほうです。
YouTubeで公開されているものだけです
採用サイトに直接埋め込まれた動画、Instagramやスカウトメールで使われている動画、説明会だけで流している動画、限定公開のものは入っていません。実際にいちばん効いている使われ方が、この数字に表れていない可能性は十分にあります。各社のチャンネル一覧から取得できる範囲(最新30本程度)までという制約もあります。
ビルメンテナンス業界の場合
この記事を書いている株式会社OneTrackは、ビルメンテナンス・ビル管理業界に特化して採用動画を作っています。そこだけ数字を細かく見ます。
ビルメンテナンス4社21本の中央値は304回、最大でも3,290回。1,000回を超えていたのは21本中5本だけでした。清掃・警備・空調衛生を足した「建物まわり」4業種110本で見ても中央値は803回、1万回超は9本です。
そして21本の中身を見ると、ほとんどが座って話す社員インタビューか、会社紹介でした。密着形式は建物まわり4業種110本のうち17本しかありません(その17本の中央値は2,116回で、やはり他より高い)。
つまりこの業界は、いちばん効く形式が、いちばん作られていない状態です。1万回を超えた動画がまだ1本もないという事実は、裏返せば場所が空いているということでもあります。
当社がこの業界に絞っているのは、この差が思っているより大きいからです。設備管理・清掃・警備では採りたい人物像が違うこと、日常点検と法定点検が別物であること、常駐と巡回では見せるべき一日の流れが変わること。この前提が共有されていないと、打ち合わせは業界の説明から始まり、企画は一般論に着地します。
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よくある質問
ビルメンテナンス会社の採用動画は、だいたい何回くらい再生されるものですか?
当社が2026年9月に実測した範囲では、ビルメンテナンス4社21本の中央値は304回、最大でも3,290回でした。1,000回を超えていたのは21本中5本です。清掃・警備・空調衛生を含めた建物まわりの4業種110本で見ても中央値は803回です。
現場職の採用動画全体(11業種317本)でも中央値は537回、64%が1,000回未満でした。数万回を前提に企画すると、ほぼ確実に外します。
採用動画を作ったのに応募が増えませんでした。再生数が少ないのが原因ですか?
再生数が少ないこと自体は珍しくありません。317本のうち64%が1,000回未満、47社のうち34社は最大でも1万回に届いていません。「再生されていない」は業界の標準的な状態であって、失敗の証拠にはなりません。
見るべきは、その動画が求職者の目に触れる場所に置かれているかです。採用サイト・求人媒体・説明会・スカウトメールのどこで使われているか。再生数は置き場所の結果であって、採用の成果そのものではありません。作り直す前に、まず置き場所を確かめてください。詳しくは採用動画が見られないときの改善に書いています。
社員インタビュー動画のタイトルに、社員の名前は入れたほうがいいですか?
実測では入れないほうが見られています。個人名を入れた39本は中央値286回、最大957回で、1,000回を超えたものが1本もありませんでした。役割でくくった76本は中央値759回、35本が1,000回超、12本が1万回超です。
よく見られている密着形式74本には、タイトルに個人名が入っているものが1本もありませんでした。役割でくくると、その方が退職しても動画を使い続けられるという運用上の利点もあります。
制作実績の本数が多い制作会社に頼めば安心ですか?
本数と再生数は結びついていません。47社の「公開本数」と「再生数の中央値」の相関はr = −0.211で、むしろ弱い負の相関でした。8本以上公開している19社の中央値は431回で、全体の537回を下回ります。
制作会社を選ぶときは本数ではなく、その会社が自分の業界の採用を構造で理解しているかを確かめてください。常駐と巡回で見せる一日が変わること、資格名を前面に出すと入口が狭く見えること。この前提が共有されていれば、打ち合わせは業界の説明から始まりません。
採用動画は短いほうが見てもらえますか?
実測ではU字でした。1分以内が635回、1〜3分が313回、3〜6分が549回、6〜10分が774回、10分以上が1,529回。いちばん多く作られている1〜3分が、いちばん低いという結果です。
ただし1分以内で1万回を超えた6本は3社に集中しており、広告配信の可能性が高いと見ています。広告費をかけずに上位に入っているのは10分超の密着形式のほうです。「短くすれば見てもらえる」とは言えません。
公開してすぐ再生数が伸びません。失敗でしょうか?
早すぎる判断です。1年未満の87本は中央値242回、1〜3年が518回、3〜5年が619回、5年以上の43本は892回でした。1万回を超えた31本の経過年数の中央値も2.0年です。
採用動画は公開直後に跳ねるものではなく、採用サイトや説明会で使い続けるうちに数字がついてくる性質のものです。3か月で判断しないでください。
この数字の元データを見ながら、話せます
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